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駐車場経営を法人化すべき?判断基準とメリット・デメリット・手続きを解説

駐車場経営を法人化すべき?判断基準とメリット・デメリット・手続きを解説

  • 駐車場経営

2025.10.05

駐車場経営の収益が安定してくると、節税や将来の拡大を見据えて法人化を検討する方も少なくないでしょう。とはいえ、駐車場は経費が膨らみにくい事業です。だからこそ、法人化が常に有利とは限りません。

重要なのは、事業規模や所得、将来像と照らし合わせて冷静に見極めることです。本記事では、法人化のメリット・デメリット、判断基準や実際の手続きの流れを解説します。

法人?個人?駐車場経営における違い

駐車場経営を「法人」で行うか「個人事業主」として行うかによって、税金の仕組みや責任の範囲、社会的な信用度は大きく変わります。

まず法人化とは、株式会社や合同会社などの形をとり、法人格を取得して事業を行うことです。法人格を持つと、個人の資産と会社の資産を切り分けられるため、会社名義で契約や事業展開ができます。

一方、個人事業主は自分の名前で事業を行い、利益はそのまま個人の所得として課税されます。手続きがシンプルで、少ない資金でも始めやすいのが特徴です。

税金面では、個人事業主は所得が増えるほど税率が高くなる「累進課税」が適用されますが、法人は一定の税率で計算されます。そのため、高所得になるほど法人のほうが有利になりやすい傾向があります。また、法人は社会的信用が高いため、金融機関からの融資や取引先との契約で優位に働く点も見逃せません。

ただし法人化には、設立費用や維持費、複雑な事務手続きといった負担がともないます。つまり「信用力や節税効果を得られる一方、コストや手間も増える」というのが法人と個人の大きな違いです。

こちらの記事では、駐車場経営を個人でするメリットについて解説しています。

必要な業務内容も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。

駐車場経営を法人化する6つのメリット

駐車場経営は比較的シンプルな事業ですが、法人化することで得られる利点もあります。ここでは、代表的な6つのメリットをご紹介します。

所得税を節税できる

個人事業主は累進課税制度により、所得が増えるほど税率が上がります。最高で45%、住民税を含めると55%に達することもあります。

一方、法人税はおおむね30%前後で一定です。そのため、年間所得が800万〜900万円を超える頃から、法人化による節税効果が大きくなります。

さらに法人では、経営者への役員報酬を経費にできるため、所得を分散して実質的な税負担を抑えることも可能です。こうした仕組みを活用することで、長期的な節税につなげられます。

出典:国税庁「所得税の税率

出典:総務省「個人住民税

相続税対策になる

個人事業主が所有する土地や建物は、相続時に相続税評価額(土地は路線価方式や倍率方式、建物は固定資産税評価額)を基準に課税対象となります。これに対し、法人化して資産を会社名義にすれば、相続時には株式として評価されます。

株式の評価は会社の収益や資産状況によって変動するため、直接的に土地を相続するよりも評価額を抑えやすいのが特徴です。また、生前贈与で少しずつ株式を移転することも可能なため、相続税の負担を分散しやすくなります。

出典:国税庁「土地家屋の評価

出典:国税庁「取引相場のない株式の評価

相続時に資産を分割しやすい

個人が土地を所有している場合、相続の際に複数人で分けるのは難しく、売却や分筆といった大がかりな手続きが必要になることもあります。

一方、法人化して土地を会社名義にすれば、資産は株式として相続できます。株式は1株単位で分けられるため、相続人同士で柔軟かつ公平に分配できる点が大きなメリットです。

退職金制度や社会保障制度を利用できる

法人化すると、経営者自身にも役員退職金制度を導入できます。退職金は給与所得よりも税制上の優遇が大きく、勤続年数が長いほど控除額が増えるため、節税効果が期待できます。

さらに、法人は厚生年金や社会保険への加入が必須となるため、将来受け取れる年金額が増えるほか、医療や労災といった保障も手厚くなります。こうした側面は、経営者にとっても従業員にとっても安心感があります。

出典:国税庁「給与所得控除

出典:国税庁「退職金を受け取ったとき(退職所得)

経費の範囲が広がる

法人になると、役員報酬や社宅制度、生命保険料、福利厚生費など、個人事業主では認められにくい支出も経費に計上できます。経費が増えれば、その分課税対象となる利益を抑えられるため、節税につながります。

ただし、駐車場経営は人件費や仕入れのような大きな支出が少ない事業です。そのため、経費計上の恩恵は限定的である点に注意が必要です。

繰越欠損金の繰越期間が延びる

個人事業主は、事業で出た赤字を3年間しか繰り越せません。これに対して法人は、最長10年間まで繰り越すことができます。

そのため、新しい駐車場の開設で初期投資がかさんだ場合や、景気の変動で稼働率が落ち込んだ場合でも、長期的に黒字と相殺して節税効果を得られます。結果として、経営上のリスクを和らげる仕組みになるのです。

出典:国税庁「青色申告制度

出典:国税庁「青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除

駐車場経営を法人化するデメリット・リスク

法人化には多くのメリットがありますが、その一方で注意すべきデメリットやリスクも存在します。ここでは代表的なポイントを整理してみましょう。

法人の設立と維持に費用がかかる

株式会社の設立には約30〜40万円、合同会社では約15〜20万円の初期費用が必要です。さらに、年間維持費用として税理士報酬、社会保険料、法人住民税均等割などで、年間70万円ほどの継続的な費用がかかります。

社会保険料の負担が増加する

法人化すると、社会保険への加入が義務となり、事業主負担分が新たに発生します。月額報酬30万円の役員1名の場合、事業主負担の社会保険料は年間約54万円となります。

赤字でも税負担が発生する

法人の場合、赤字であっても法人住民税の均等割(年間約7万円)が課税されます。この固定費は、事業開始初期や不景気による収益悪化時には大きな負担となる可能性があります。

出典:総務省「法人住民税

事務作業に時間がかかるようになる

法人化により、複式簿記による帳簿作成、決算書類の作成、社会保険関連手続き、役員改選手続きなどの事務作業が増加します。これらは専門知識を要するため、多くの場合、専門家への依頼が必要となります。

基本的に駐車場経営は法人化に向かない|2つの理由を解説

ここまで法人化のメリットとデメリットを見てきましたが、結論としては「駐車場経営は基本的に法人化にあまり向かない」といえます。その主な理由は次の2点です。

法人化による節税効果があまりないから

駐車場経営は大きな仕入れや人件費が発生しないため、経費として計上できる支出が少なくなります。結果として、法人化の大きな魅力である「経費計上による節税効果」を十分に享受しにくいでしょう。

経費の金額が少ないから

電気代や清掃費といったランニングコストはあるものの、飲食店や小売業のように日常的な経費が多い事業ではありません。そのため、法人化によって経費の範囲が広がっても、実際に活用できる場面は限られます。

【補足】駐車場経営を法人化した方がよいケース

基本的には法人化に向かない駐車場経営ですが、次のようなケースでは検討する価値があります。

  • 年間所得が1,500万円を超える大規模経営の場合

累進課税で高税率が適用されるため、法人税率のほうが有利になりやすいです。

  • 他の高所得と合算して課税される場合

給与所得や不動産収入などと合算して高い税率がかかる方は、法人化で所得を分散させる効果が期待できます。

  • 将来的に事業拡大を予定している場合

複数拠点の展開や新規投資を見据えるなら、法人の信用力や資金調達力が役立ちます。

  • 相続対策が急務な場合

法人化して資産を株式に置き換えることで、評価額を抑えたり分割を柔軟に行えたりします。

  • 社会的信用が必要な場合

金融機関からの融資や外部パートナーとの取引を進める際、法人格があると有利です。

つまり「大きな収益がある」「今後の成長や承継を視野に入れている」という方にとっては、法人化が有効な選択肢となります。

出典:国税庁「所得税の税率

駐車場経営を法人化するタイミングの見極め方

法人化は思いついたときにすぐ行えばよい、というものではありません。事業規模や税金、将来の計画によって「得になるタイミング」が変わります。ここでは、判断の目安となるポイントを整理します。

売上・利益の観点

最も重要な判断基準は、年間の所得額です。年間所得500万円未満では法人化不要、500から800万円未満では法人化のメリットは限定的、800から900万円では法人化を検討開始、1,000万円以上では法人化を積極検討、1,500万円以上では法人化を強く推奨します。

これらは駐車場経営の利益のみでなく、ほかの所得と合算した総所得で考える必要があります。

消費税の観点

個人事業主の場合、前々年の売上が1,000万円を超えると消費税の課税事業者となりますが、法人を新設した場合、設立1期目と2期目は消費税の納税義務が免除される場合があります(資本金1,000万円未満の場合)。

この特例により最大2年間消費税を節約できる可能性があります。

出典:国税庁「基準期間がない法人の納税義務の免除の特例

社会保険加入の観点

現在の国民健康保険料が高額で負担に感じている場合や、将来の年金を充実させたい場合は、法人化によるメリットが大きくなる可能性があります。一方で、事業主負担分の社会保険料(給与の約15%)が新たに発生する点も考慮が必要です。

社会的信用の観点

将来的に複数の駐車場運営や関連事業への展開を予定している場合は、法人格による社会的信用の向上、金融機関からの融資の受けやすさ、大企業との取引機会の増加などのメリットを活用できます。

駐車場経営を法人化する際の流れ

法人化を決定した場合の具体的な手続きの流れを説明します。全体で約1〜2か月程度の期間を要します。

1:設立する会社の種類を決める

株式会社(設立費用約30万円、社会的信用度が高い)と合同会社(設立費用約15〜20万円、経営の自由度が高い)から選択します。

小規模経営なら合同会社、事業拡大を見据えるなら株式会社が一般的です。

2:定款を作成する

会社の基本ルールを定める重要な書類です。商号、事業目的、本店所在地、出資額、発起人情報などを記載します。

駐車場経営の場合、事業目的には「駐車場の経営」「不動産の管理・運営」などを含みます。

3:法人名義の銀行口座を作る

登記事項証明書、印鑑証明書、定款のコピーなどが必要です。近年は審査が厳格化されており、事業計画書なども準備しておくとスムーズです。

4:法務局への登記を行う

設立登記申請書、定款、各種証明書を提出し、登記申請から完了まで通常1~2週間程度かかります。

5:個人事業の廃業手続きを行う

個人事業の開業・廃業等届出書などを廃業日から1か月以内に税務署に提出します。

出典:国税庁「個人事業の開業届出・廃業届出等手続

6:税務や社会保険の手続きを行う

税務署への法人設立届出書、年金事務所への社会保険関連届出など、各種手続きを期限内に行います。

出典:国税庁「新設法人の届出書類

7:契約関係の引継ぎを行う

個人名義の各種契約を法人名義に変更します。月極マネジメントどっとこむでは、このような法人化にともなう契約変更もスムーズにサポートいたします。

まとめ

駐車場経営の法人化は、メリットとデメリットを慎重に比較検討したうえで判断すべき重要な経営判断です。年間所得が800万円から900万円を超える場合や将来的な事業拡大を計画している場合は検討価値がありますが、駐車場経営は経費が少ないという特性があり、小規模な経営では法人化のメリットが維持費用を下回る可能性が高いのが実情です。

重要なポイントは、自分の事業規模と将来のビジョンを明確にし、所得だけでなく維持費用も含めて総合的に判断することです。専門家(税理士・司法書士等)への相談も欠かせません。

駐車場経営の法人化をご検討中で、現在の管理状況や今後の事業計画について不安がある場合は、月極マネジメントどっとこむの無料査定や管理相談をぜひご活用ください。1台からの査定対応、リーズナブルな管理料、時代に合った柔軟なご提案で、法人化後の安定経営をサポートいたします。

法人化は慎重な判断が必要ですが、適切なタイミングで実行すれば、駐車場経営の新たな成長段階への扉を開くことができるでしょう。

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